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東京地方裁判所 昭和55年(特わ)3379号 判決 1981年4月27日

裁判所書記官

阪下六代

本店所在地

東京都新宿区歌舞伎町二丁目一八番五号ノーベル書房株式会社

(右代表者代表取締役山本一哉)

本籍

東京都新宿区下落合二丁目二九〇番地

住居

東京都新宿区西落合四丁目五番七号

会社役員

山本一哉

大正一三年二月一八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官井上経敏出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人ノーベル書房株式会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人山本一哉を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人山本一哉に対し、この裁判の確定した日から、三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人ノーベル書房株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都新宿区歌舞伎町二丁目一八番五号に本店を置き書籍出版業等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人山本一哉は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人山本は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空経費を計上して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五一年一一月一日から昭和五二年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八二七一万三一一五円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五三年一月四日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所在の所轄淀橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五六年押二八八号の3)を郵便により提出し、(通信日付印は昭和五二年一二月三〇日)、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額七二二四万五二〇〇円(別紙(二)ほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一、被告人山本の当公判廷における供述

一、被告人山本の検察官に対する供述調書四通

一、三枝浩美及び森田良夫の検察官に対する各供述調書(各四通)

一、収税官吏作成の売上除外額、たな卸、製作費、印刷費、取材費(パリ関係)、仕入勘定、賃借料、修理費勘定、広告費、事務用品費勘定、図書費、消耗品費勘定法定福利費勘定、公租公課勘定、交際接待費、交通費、旅費、簿外預金利息、支払利息、繰越欠損金の損金算入額、著作権使用料、交際費の損金不算入額及び受取利子配当勘定に関する各調査書各一通

一、東京法務局新宿出張所登記官作成の登記簿謄本(検察官証拠請求番号甲41のもの)

一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和五六年押第二八八号の1)及び確定申告書(自51・11・1至52・10・31)一袋(前同号の3)

なお、検察官冒頭陳述書添付の修正損益計算書の勘定科目番号<16>図書費の貸方当期増減金額欄は九五万八〇三八となっているところ、収税官吏作成の図書費調査書(検察官請求証拠番号甲20)によれば右金額は、九五万八〇七四とするのが正しいと認められるので、実際所得金額も右開差分三六円増加して認定した。(ほ脱税額は増減しない。)

(法令の適用)

被告人山本の判示所為は法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役一年二月に処し、情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から、三年間右刑の執行を猶予することとする。さらに、被告人山本の判示所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により判示の罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、その金額の範囲内で被告会社を罰金二〇〇〇万円に処すこととする。

(量刑の事情)

本件は、以前にも出版会社を経営して倒産したことのある被告人山本が、出版業を目的とする被告会社の業務に関し、竹久夢二全集の通信販売などにより一時的なブームで業績をあげた昭和五二年一〇月期の事業年度において七二〇〇万円余りの法人税を免れたというものであるところ、その動機はブームが終わりいつまた再び資金繰りに苦しむことになるやも知れないことをおそれたというものであって、格別斟酌すべきものとも思われず、被告人自ら架空の領収書を調達するなどしたうえで裏金作りを従業員に指示しているのであって脱税の手段も悪質であり、ほ脱率が一〇〇パーセントで脱税額も単年度としてはかなり高額であることのほか、わいせつ文書等販売の罪で罰金刑に処せられた前科があることなどもあわせ考えると、たとえ、出版業の経営にみられる不安定性を考慮に容れても、被告人の刑責は軽視できない。

しかしながら、犯行後本件にかかる本税・重加算税等の一部を納付していること、二度と脱税はしない旨誓っていて経理体制も整えていることなど被告人に有利な事情も認められ、その他被告人の反省の程度、健康状態等本件に顕れたすべての事情を総合考慮し、主文のとおり量刑する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 久保真人 裁判官 川口政明)

別紙(一)

修正損益計算書

ノーベル書房株式会社

自 昭和51年11月1日

至 昭和52年10月31日

<省略>

別紙(二)

ほ脱税額計算書

ノーベル書房株式会社

<省略>

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